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『北八ッ彷徨』そして『八ヶ岳挽歌』

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八ヶ岳を語る山の随筆の中で、間違い無く名作である「北八ッ彷徨」。

ちなみに、このブログのタイトルでもある「山谷彷徨」という言葉は、この山口耀久氏の「北八ッ彷徨」へのオマージュでもある。


「南八ヶ岳を動的な山だとすれば、北八ヶ岳は静的な山である。前者を情熱的な山だといえば、後者は瞑想的な山だといえよう。
 北八ヶ岳には、鋭角に頂稜を行く、あの荒々しい興奮と緊張はない。原始の匂いのする樹海のひろがり、森にかこまれた自然の庭のような小さな草原、針葉樹に被われたつつましい頂や、そこだけ岩塊を露出しているあかるい頂、山の斜面にできた天然の水溜りのような湖、そして、その中にねむっているいくつかの伝説―
さまよい―そんな言葉がいちばんぴったりするのが、この北八ヶ岳だ。」


今のように至るところに林道は走っておらず、人も殆ど入らなかった1950年代頃の北八ッの話だが、地理感があれば読んでいるだけで当時の森深い静かな山歩きを想像することが出来て楽しい。
(もちろん今の北八ッにも、その当時と変わらぬ魅力が残されている部分もあると思う。)

当時の大河原峠や双子山、双子池の話などはとても興味深く、狩猟や釣り、山菜、キノコ採りなど山遊びのホームグラウンドが北八ッの僕にとっては、とにかく好きな山の本だ。
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そして、そんな北八ッ彷徨から約40年後(2001年)に出版されたのが、今回読了した「八ヶ岳挽歌」。
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「北八ッ彷徨」が賛歌ならば、「八ヶ岳挽歌」はまさしく著者の中の八ヶ岳の終わりの歌で、日本の経済が発展し、観光開発の為に失われていく八ヶ岳の自然の姿を、悲観的に描いている。

特に今では定番というか、あって当たり前になった「北八ヶ岳ロープウェイ」(ピラタスロープウェイ)に関しては、かなりボロクソに書いていて面白い。

また、大河原峠から佐久側にあるバブル期に開発した「冨貴の平」(仙境都市)、「鹿曲林道」の開発についても批判的に書かれており、とても興味深く読んだ。

今や廃墟と化した別荘群、ボロボロに崩壊した観光道路・・この開発に携わった人達は今どう思っているのだろうか・・

現在の鹿曲林道の様子↓
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個人的に一番興味深かったのが、大河原峠はもちろん、春日渓谷、トキンの岩などの歴史がかなり掘り下げて書いてあり、知らなかった色々な事を知る事ができた。


悲観的な事が多い本作だが、最後に、著者が30年ぶりに取材で北八ッに再訪した時の話が書かれている。

今や林道が開発され、秘密の場所ではなくなった愛する「雨池」。

それを久しぶりに恐る恐る見た時、想像していたものとの違いに驚く。

「雨池の岸に立って、まったく意外だったのは、池に水が満々と湛えられていることだった。小さくなったという雨池に恐れと不安のまじった心の準備をして来ただけに、その広々とした湖水の景観は、私にはうれしい驚きというほかなかった。そして、さらに私を喜ばせたのは、池の周囲の鮮やかな紅葉だった。ダケカンバの黄色とナナカマドの赤がひときわ色濃く水際を飾って、予想もしなかった華やかな雨池を見せてくれたのだ。実際、こんな華やかな雨池を、私はこれまで見たことがない!」


その昔、人も滅多に入らなかったという当時の北八ッを知らない自分にとっては、なんだかホッとするような、嬉しいような気持ちになり、自然の逞しさを感じた。

また久しぶりに静かな雨池まで歩いてみよう。



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by sanyahoukou | 2019-08-24 10:00 | 山の本 | Comments(0)

信州の山の中に家族3人暮らし。狩猟、山歩き、釣り、採集した食材での料理など、山での暮らしの記録。


by HATA